何が変わった?相続改正

カテゴリ:相続のこと

高齢化が進み社会経済などに大きな変化が出てきたことから、相続法が39年ぶりに改正されました。現在の日本に適した改正とはどんなものになっているのか?各項目に分けて書いていきましょう。

6つの項目

①配偶者の居住権保護
②遺産分割
③遺言制度
④遺留分制度
⑤相続の効力
⑥相続人以外の貢献

①配偶者の居住権保護

~改正前~
以前の制度では、被相続人(夫)名義の自宅に住んでいた妻(配偶者)が遺産分割協議で自宅を相続出来ない場合、住む権利が保護されないことがあり問題となっていました。

例えば
●相続人:配偶者と子1人相続(2分の1) 
●総遺産6000万=自宅3000万円 +現金3000万円 の場合

このケースでは、配偶者が自宅に住み続けるためには自宅を相続する必要があります。配偶者が自宅3000万円、子が現金3000万円を相続した場合、配偶者は自宅に住み続けることはできますが、現金がないためその後の生活が出来なくなることも・・・。逆の場合も現金を配偶者が相続すると家を失うことになります。

~改正後~
〇「配偶者居住権」
自宅を相続しなくても「配偶者居住権」を取得すれば住み続けることができる権利です。自宅を「所有権」と「居住権」に分けて相続するということになります。

●配偶者 自宅(居住権)1500万円 + 現金1500万円 =3000万円
●子   自宅(所有権)1500万円 + 現金1500万円 =3000万円

〇「配偶者短期居住権」
配偶者が亡くなってから遺産分割協議が終わるまでの居住権を認める権利です。
もし、「配偶者居住権」が認められない時でも一定の期間は自宅に住むことができます。下記の二つのうちで期間が長いほうとなっています。

●遺産分割で自宅の帰属が確定した日 
●相続開始から6ヶ月を経過する日

②遺産分割

~改正前~
〇「特別受益の持ち戻し免除」
生前に被相続人から生前贈与を受けていたり、相続開始後に遺贈を受けたりなど特別な利益を受けている場合に、何も貰っていない相続人がいれば不公平な相続になってしまいます。これを公平にするために、相続法では特別受益を遺産に加えて相続を分ける計算をすることができる決まりがあります。この計算を「特別受益の持ち戻し計算」といいます。

被相続人が遺言などで、「特別受益の持ち戻し計算」をしないと意思表示すれば計算の必要がなくなります。しかし、配偶者に自宅を生前贈与して意思表示をしていないと特別受益として計算されるため相続が少なくなってしまいます。

~改正後~
基本的には、意思表示が必要ですが配偶者には一定の条件を満たせば、意思表示があったとみなされ配偶者が保護されます。条件としては●婚姻が20年以上である ●自宅の贈与(遺贈)
条件を満たしていれば意思表示がなくても持ち戻し計算は免除されます。

〇「預貯金の払い戻し」
~改正前~
生活費や葬儀の費用などお金が必要になった時でも、遺産分割が終わるまで被相続人の預貯金を払い戻すことができませんでした。

~改正後~
家庭裁判所の判断を経ずに一定の金額については、払い戻しができるようになりました。
一定の金額の算出法は「相続開始時の預貯金 × 3分の1 × 共同相続人の法定相続分」となります。また、金融機関ごとに払い戻し可能額は150万円までとなっています。

③遺言制度

〇「自筆証書遺言の緩和」
~改正前~
全文を自分で書かなくてはなりませんでしたが、高齢であったり病気の場合に文字を書くことが難しいため文字が判別できなかったりなど問題になることも。(遺言の効力がなくなる)

~改正後~
負担軽減のため、通帳のコピーやパソコンで作った目録については添付することにより自筆証書遺言を作成することができことになります。すべてに署名・押印が必要。

〇「自筆証書遺言の保管」
従来、保管は自宅でされることが多く紛失や捨てられてしまったり、書き換えられるなどのトラブルが起こっていました。これを防ぐために法務局で遺言書を保管する制度がつくられます。この制度を利用した場合は、家庭裁判所での検認手続が不要になります。

④遺留分制度

〇「遺留分減殺請求」
~改正前~
遺留分とは、一定範囲の法定相続人最低限保証された遺産に対する権利です。例えば、遺言書に1人に全財産を相続させるとあっても他の相続人は法で決められた遺留分額まで、遺言書かかれた1人に権利を行使できます。これを「遺留分減殺請求」といい、今までの法では、目的物の返還請求とされていたので行使されると目的物(会社などの不動産)が共有状態になりトラブルが起きていました。

~改正後~
権利が行使できるのは、金銭の支払請求となりました。「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」に呼び方も変更されました。

〇「算定方法」
以前の法では、何十年前の贈与なども遺留分の算定に含め計算されていましたが、改正後は相続開始前「10年間」に限定することになりました。

⑤相続の効力

〇「登記等の対抗要件」
改正では、法定相続を超える相続をした場合 遺言や分割協議に関係なく相続を超える部分を第3者に対抗(権利を主張)するには、登記などをしなければならないと変更されました。

⑥相続人以外の貢献

相続人ではない親族(子の配偶者など)が、被相続人の看病や介護をするケースがありますが改正前は、遺産を分配されることはなく不公平な状況でした。しかし、改正後は無償で被相続人の看病や介護に貢献し、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした場合は、相続人に金銭の請求ができるようになりました。

まとめ

相続の改正について書いてきました。既に施行されているものとこれからのものも含め、たくさんの方策が盛り込まれています。大切な遺産ですので、トラブルがないように済ませたいものです。

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