相続の具体例~「犬神家の一族」の場合~

カテゴリ:相続のこと

はじめに

資産を保有している人が亡くなった場合、何かともめやすいのが相続に関すること。
ところで、相続のもめごとを題材にした物語と言えば、有名なのは「犬神家の一族」ですよね。
横溝正史が著した「金田一耕助シリーズ」の一つで、発行から50年近くが経った現在まで3回の映画化、6回のテレビドラマ化がなされており、日本を代表する推理小説と言っても過言ではないでしょう。
今回は相続の具体例として、この「犬神家の一族」について考えてみたいと思います。

遺言書の内容

この作品の年代設定に関しては色々な意見があるようですが、今回はシンプルに現在の法律に即した場合にどうなるかを考えてみることにします。

物語は犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛さんが残した遺言書をめぐるものとなっています。
遺言書の内容をざっくり言うと「佐兵衛さんの孫3人の誰かと結婚することを条件に、全財産を佐兵衛さんの別の孫(認知はしていない)である野々宮珠世さんに相続させる」というものでした。

結局、孫3人のうち2人は殺されました。
加えて、ただ1人生存している佐清さんも罪を償うためにおそらく刑務所に入ることとなりそうです。しかし珠世さんが「佐清さんさえお望みなら10年でも20年でも待つ」とおしゃっていることですので、遺言書の条件は満たすということにしておきましょう。

また、遺言書そのものが法的に有効であるのかどうかについても色々と議論があるかもしれませんが、これに関しても原作中に出てくる弁護士の言葉通り「完全に有効である」ということにしておきます。

全財産は珠世さんのもの?

となると、犬神佐兵衛さんが残した財産はすべて珠世さんが相続することになるのでしょうか?

それが必ずしもそうとは言い切れないのです。
佐兵衛さんの実子である次女の竹子さんと三女の梅子さんは、この相続において法定相続人に該当することになります。
法定相続人のうち、配偶者・子・直系尊属については、遺言書などにより相続から除外されたとしても、最低限の遺産(遺留分)を請求して受け取る権利(遺留分減殺請求権)が認められています。

法定相続人が子のみの場合、遺留分は2分の1と定められています。
そのため、竹子さんと梅子さんが請求を行えば、佐兵衛さんの遺産のうち半分は2人が(それぞれ4分の1ずつ)取得できることとなり、珠世さんが受け取る遺産は残りの半分ということになるわけです。

最後に

実は、法定相続人はもう1人いました。
長女の松子さんです。
しかし、松子さんは自殺してしまいましたし、もし生存していたとしてもボートに細工し相続人である珠世さんを殺そうとしていますので、法定相続の権利ははく奪(相続欠格)されることとなったでしょう。
しかし、松子さんが相続欠格となった場合でも代襲相続は可能ですから、遺留分を請求する権利が佐清さんに受け継がれるようにも思えます。

ただし、佐清さんも珠世さんの首を絞めて殺そうとしています。
ですが、これは母親の松子さんをかばって自分が犯人であると見せかけるための行動であり、本当に珠世さんを殺害する意志があったのかどうかは微妙なところです。

さあ、佐清さんは相続欠格になるのでしょうか?
それとも、遺留分減殺請求を起こすことができるのでしょうか?
このへんの判断は、裁判所に委ねることとしましょう。