相続における後見人制度の利用~認知症の方のケース~

カテゴリ:相続のこと

【はじめに】
我が国の人口の中で65歳以上が占める割合(高齢化率)は、2007年に21%を超え、日本は超高齢社会に突入しました。
超高齢化に伴って認知症患者の数も増加しており、2025年には高齢者のうち約5人に1人が認知症を患うという推計もあります。
このように高齢者の方が増えるなか、被相続人のみならず相続人の方も高齢で認知症を患っているケースも珍しくなくなってきました。
今回は、相続人の中に認知症を患っている方がおられる場合に利用されることの多い後見人を利用する制度について紹介します。

【認知症の場合の遺産分割協議】
遺産相続の手続きでは多くの場合「遺産分割協議」が行われます。
しかし、相続人の中に認知症を患っている方がおられ、その方が正常な判断をすることができない場合には、意思決定能力に欠けるため遺産分割協議に参加することができません。遺産分割協議は法律行為であり、協議を行うにあたっては正常な意思決定能力を持っていることが求められるからです。
遺産分割協議には法定相続人全員が参加しなければならないため、相続人の中に認知症の方がいる場合は、協議そのものを行うことができなくなります。
このような場合には、認知症を患っている相続人の代理人を定めて遺産分割協議を行うという方法があります。

【成年後見制度とは】
このような代理人は成年後見人と呼ばれ、成年後見制度によって選任されます。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の二つがあります。
法定後見制度は、被後見人の判断能力が欠けていたり不十分であったりする場合に、本人や親族の申立てによって家庭裁判所が後見人を選任する制度です。
これに対して任意後見人制度とは、将来に正常な判断をすることができなくなる場合に備えて、本人が後見人を選任し、契約をしておく制度です。
認知症を患っている法定相続人の代理としては、一般的に前者の法定後見制度により後見人が選任されることになります。
なお兄弟のように後見人が同じく相続人に該当する場合は利害が対立するため、後見人としての権限の行使が制限されます。さらに特別代理人や後見監督人を選任する必要が出てきます。

【まとめ】
相続人の方が認知症を患っており、正常な判断をすることができない場合であっても、上記のように成年後見人が選定されれば遺産分割協議を行うことができます。
しかし、この方法にはデメリットも存在します。
成年後見人は、遺産分割協議が済んだからといって容易に辞任できるものではなく、一般的には被後見人が亡くなるまで財産の管理を行わなければなりません。
このように成年後見制度は、途中で利用をやめるということが困難な制度です。
もし、選任された成年後見人が弁護士や司法書士のような専門家である場合には、生涯にわたって報酬を支払い続けなければならないことになってしまいます。
遺産相続の際には、場合によっては法定相続も選択肢に入れながら、慎重に方法を選ぶようにした方が良いでしょう。